せっかく商品を作ったのに、イマイチ売れない。
という経験はないでしょうか?
昔に比べて、日本企業が世界市場で苦戦している。
というニュースを見かけることも多くなっています。
このような問題を打破するために注目されている考え方が、「デザイン思考」です。
ただデザインといっても、多くの日本人が想像する「デザイン」の意味とは違います。
我々はデザインと聞くと、ついホームページやアプリの見た目を整えたり、製品の外側をデザインする仕事を想像してしまいがちです。
しかしデザインの本来の意味は「設計」で、実は幅広い意味を持っています。
デザイン(設計)は、問題を解決するために行われます。
つまりデザイン思考とは、「人々が気づかないで持っている本当の問題を解決するための考え方」なのです。
現在、民泊仲介サイト大手のAirbnbやP&G、Googleといった外資系企業やYahoo Japan、楽天などの企業が、デザイン思考を導入しています。
この記事では現在注目されて始めているデザイン思考を、初心者でもわかりやすく解説します。
デザイン思考とは?
最初にデザイン思考とは、いったいなんなのでしょうか?
デザイン思考とは、デザインした製品やサービスの先にある人々のニーズを理解する考え方です。
仮説を立てて、初期段階では明らかにならなかった解決策を探る思考方法を言います。
アメリカのカリフォルニア州のシリコンバレーにある世界的なデザインコンサルティング会社 IDEOの創始者 ティム・ブラウンによって発案されました。
今までの世の中の会社は、会社のやりたいこと、できることを元に製品やサービスを作ることが多かったと言えます。
もしかすると現在でも、昔と同じように作り、売れなくなったと悩んでいる会社が多いかもしれません。
また競合他社の類似商品に埋もれて、差別化できていない。
海外の価格の安い価格の安い製品に押されて、自社の商品が太刀打ちできていない。
など、理由も考えられます。
それを解決するために、人々が本当に求めていることを考えて、製品やサービスを作り出すデザイン思考が求められるようになりました。
こう説明すると、デザイン思考は工業製品をデザインしたり、サービスを開発するときに使われるもの(CX・顧客体験)だと思われるかもしれません。
しかし、実は公害や人口過多などの社会問題を解決するためにも使われています。
職場環境を改善する(EX・働く人の体験)アイディアを出すときにも利用されていますし、さまざまなシーンでデザイン思考は利用されていると言えるでしょう。
注釈:顧客体験はCX(Consumer Experience・コンシューマーエクスペリエンス)デザイン、働く人の体験はEX(Employee Experience・エンプロイーエクスペリエンス)デザインと呼ばれ、デザイン思考を取り入れた企業で用いられる。
なぜデザイン思考が求められるようになったのか?
デザイン思考は工業製品だけではなく、サービスや社会問題、職場環境の改善などにも使われると紹介しました。
では、なぜデザイン思考は、世の中や会社で求められるようになったのでしょうか?
それには私たちの住んでいる社会の変化が大きく関係しています。
詳しく理由を掘り下げてみましょう。
まだハードウェアが成熟していなかった時代は、「技術力」に焦点が当たっていました。
成長している市場へ向けて、新機能や高いスペックを提供すれば、顧客(お客さん)は買ってくれる。そんな時代でした。
テレビの歴史を見てもそうです。
ここではわかりやすいように、会社による工業製品のテレビ商品開発の歴史に焦点を当てて説明してみます。
テレビが日本で一般発売されたのは1950年代のことです。
・1953年 白黒テレビ放送開始
・1960年 カラーテレビ放送開始
・1972年 赤外線リモコン(遠隔操作)テレビ発売
・1976年 ビデオデッキ(録画機能)発売
・1978年 ステレオ音声放送開始
・1990年代 テレビ画面の大型化
・2003年 デジタル放送開始 薄型テレビ買い替えが広まる
このように1950年代から2000年代くらいまでは技術の進歩と共に、新しい機能を持ったテレビが生まれ、販売されてきました。
しかし時は流れ、現在は技術や市場が成熟しています。
こうなると、会社が技術的に実現できる製品を成長している市場に供給するだけでは、売れなくなってしまいました。
たとえば2010年代に入って4Kテレビや3Dテレビが発売されましたが、どれだけの人が魅力的に思ったでしょうか?
「4Kテレビや3Dテレビより、YouTubeのほうが魅力的だ!」
そう考える若者は多かったのではないでしょうか?
昔に比べてインターネットが発達し、いつでもどこでも見れるYouTubeが誕生したことで、ニーズが変わってしまったのです。
一方で、電機メーカー(会社)は顧客が真に求めていることを深く探索せず、テレビの付加価値をあげるために4Kや3D機能をテレビにつけて、高価格帯のテレビを売ろうとしました。
成熟した市場では、新しい機能を加えて発売しても、その商品から得られる体験を大きく変えることは至らず、「ほしい!」と強く思われづらくなってしまいます。
だからこそ、(時には顧客も気づいていない)顧客が真に求めているものを知ることで、求められるモノやサービスを開発するデザイン思考が必要とされるようになったのです。
デザイン思考の難しさとスティーブ・ジョブズの言葉の誤解
しかし、デザイン思考の難しいところは、この「顧客が真に求めているものを知ることで、求められている商品(もしくはサービスや解決手段)を開発すること」です。
ここを探り当てるのが、デザイン思考の難しさだと言えるでしょう。
顧客は、必ずしも自分の真にほしいものを知っているわけではありません。
自動車を普及させたヘンリー・フォードの有名な言葉に、「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬がほしい」と答えていただろう」があります。
アップルの創業者のスティーブ・ジョブズが好んで口に出していたので、聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
顧客は「馬のように素早く移動できる乗り物」が表現できません。
また頭の中で思いつかないから、つい「速い馬がほしい」と言ってしまうのです。
だからといって顧客の要望に応えて、速い馬を提供しても、これまでの馬との違いは軽微で、「こんな商品はこれまでになかった」と大きな満足を得ることはできないでしょう。
顧客は本当に速い馬がほしいのか?
馬ではなくて、魔法のじゅうたんでもいいのかもしれない。
いや、自動で動く台車の方が便利なのでは?
こうやって顧客ニーズを分析すると、顧客は速い馬がほしいのではなく、速く移動する手段を欲しがっていることに気づきます。
このようにデザイン思考は、顧客に寄り添い、本当に相手が抱えている問題を解決する方法を探り当てる考え方です。
しかし先ほどのヘンリー・フォードの有名な言葉、
「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬がほしい」と答えていただろう」
を聞いて、こう考えた人もいるのではないでしょうか?
「顧客にほしいものを聞いてもわからない。だから、自分の本当にほしいもの、顧客のほしいものを自分で考えて、世の中に出そう」
フォードの言葉はスティーブ・ジョブズが好んで引用していたので、そう誤解されることも多いようです。
ただ、そう考えて独善的に作っても、ヒットを生み出すのは難しいです。
(実はスティーブ・ジョブズも顧客のニーズを無視した自分のほしいコンピューターを作り、まったく売れなかったという失敗を何度も繰り返しています。彼の言ったことをそのまま信じると落とし穴にハマるでしょう。)
だからこそ、顧客が本当に求めていることを探り、商品化やサービスを作って問題解決するデザイン思考が、今注目されているのです。
デザイン思考のプロセスは?
現代社会でデザイン思考が求められるようになった背景は、これでわかったと思います。
では実際にどのような流れでデザイン思考は使われるのでしょうか?
デザイン思考は、「顧客が本当に悩んでいることは何か」「どのように解決するか」「なぜ必要なのか」「顧客が価値を感じるポイントはどこか」などを考えます。
主に事前の問題定義と5つの過程(プロセス)のステージがあります。
5つのステージは下の通りです。
・共感(Empathise)
・定義(Define)
・発想(Ideate)
・試作(Prototype)
・テスト(Test)
一つ一つ紹介します。
0. 事前準備をする
デザイン思考のプロセスに入る前に大事なことは、どんなトピックをテーマにして、プロジェクトを進めるか決めるかです。
・仮説を立てる
・前提、制約を決める
・意思決定者を決める
・メンバーを選ぶ
・日程やタイムスケジュールを決める
など、事前準備をすることがいろいろとあります。
1. 共感(Empathise)
デザイン思考を使って考えるトピックを決めたら、まずは顧客を観察し、顧客のことを理解します。
この時に忘れてはいけないコツが、常に顧客目線を持ち続けることです。
トピックをもとに、関係していそうな人々へのインタビュー(デプスインタビュー)などを通して、顧客のペインポイント、顧客が重要に思っているところがどこにあるのか探ります。
ポイント デプスインタビューとは?
デプスインタビューは一対一で質問していく手法。
一対一の対面で、「なぜそう思ったのですか?」と詳細に掘り下げて、回答者の行動の裏側の理由まで探って明らかにできるのが最大の特徴。ただし、通常のインタビューでは、おたがいに知っていることや回答者のみ知っていることは答えやすいが、回答者しか知らないことやおたがい知らないことを探るのは非常に大変である。(ジョハリの窓の考え方を参照)
この共感が、デザイン思考の根底だと言えるでしょう。
デザイン思考を取り入れている現場でも、これを無視して進めてしまうケースが本当に多いです。
たとえば例として、「地方の旅館に泊まってもらう体験をデザインする」を通して考えてみましょう。
顧客は地方の旅館に泊まる時、どのような問題点や不満を感じているでしょうか?
ここで大事なのは、旅館の経営者やコンサルタントだけで考えて、顧客が感じる問題点を出さないことです。
実際に旅館を利用するお客さんにインタビューしたりして、旅館に泊まる人の気持ちに寄り添いましょう。
初期段階から、顧客インタビューなどの気づきを元にしないと、作り手側のイメージで「顧客(泊まる人)はこうだと思ってるよね」という仮定で話を進めてしまいます。
しかし顧客インタビューを通じて、これまで見えていなかった課題や問題が浮かび上がるかもしれません。
顧客の気持ちに寄り添ってこそ、自分たちが思いもよらなかった問題点を発見できます。このポイントはとても重要です。
2. 定義(Define)
顧客インタビューなどで観察すると、「顧客の困っていること」、「なぜ困っているのか?」がはっきりと明らかになります。
この情報をもとに「ターゲットは誰か?」、「何を解決するべきか?」、「どうやって問題を解決すべきか?」を導き出していきましょう。
この時、定義付けでは、「How Might We(我々はどうすれば、〇〇が、〇〇するのに、〇〇させることができるだろうか?)」という肯定的に言い換えます。
「HMW(How Might We)」と言い換えることで、問題・課題に対しての解決方法を広げて考えられるのです。
たとえば、「ショッピングセンターで椅子がなくて、ゆっくりできなかった」という不満を聞いたとします。
ここで、「椅子を置く」だけにとらわれると、「ショッピングセンターに椅子やソファーを置く」しかアイディアが浮かんできません。
しかし、HMWにそって、「我々はどうすれば、広大なショッピングセンターで顧客が買い物をしているとき、疲れを感じさせることなく買い物してもらえるだろうか?」と定義したとしましょう。
こうすれば休む場所だけでなく、電動式のカートを提供したり、お店が移動したり、エクササイズを取り入れた買い物体験を提供したりと、幅広い解決方法を考えることができます。
また定義付けは、どれくらいのサイズ感にするかも重要です。
定義付けを間違えると、せっかくデザイン思考を使って長い時間話し合ったのに、改善するポイントが小さくなってしまいます。
もしくは解決する問題点が大き過ぎて、自分たちだけの手に負えなくなることもありえるでしょう。
たとえば地方の旅館に泊まる体験を例に出して、定義付けしてみます。
地方の旅館のに泊まろうとしたけど、「地方の旅館を予約しようとしたけど、旅館のホームページで予約しずらかったので、楽天トラベルからホテルを予約してしまった」という不満を聞いたとします。
ここで、「予約するのが大変なら、これはホームページの問題だ」と考えてしまい、「どうすれば、旅館のホームページで予約ボタンをすぐに見つけてもらえるか?」と問題定義したとしましょう。
しかし、この悩みから解決できるのは、旅館のホームページのレイアウト変更くらいしかありません。
一方で、「地方の旅館に泊まりにくいのは、都心から片道3時間かかる」と不満を聞いたとします。
そこで今度は、「どうすれば、都内から旅館近くの最寄駅までスムーズに移動してもらえるか?」と問題定義したとしましょう。
ただ、今度は問題が大きくなりすぎてしまい、自分たちの手に負えない範囲の解決策まで出てきてしまいます。
「都内から地方の旅館の最寄駅に新幹線を通してもらう。それがダメなら特急列車を走らせてもらう」
こう考えた場合、JRや国土交通省まで掛け合わないといけず、現実的ではありません。
何を解決すると、大きなインパクトを与えられるのか。それが真に顧客が求めていることなのか?
これを見つけ出すことが大事です。
そこで、「旅館の慣れない畳の部屋で、ゆっくり寝られなかった」という不満をもらったので、このポイントを解決して大きなインパクトを与えることにしました。
この時のデザイン思考での話し合いはこんな感じです。
「畳の部屋で寝れないとは何が原因なんだろうか?」
「ふだんの家の洋室と違うのが問題なのでは?」
「このインタビューした人は、旅館のテレビのチャンネルが少ないのも不満だったことを挙げてるよ」
「自宅で寝る前にやっているテレビを見ることができないのが不満だったのかな?」
「ひょっとしたら、自宅で寝る前にやってるルーティーンができなかったことが、旅館で寝れない真の原因だったのでは?」
このようにデザイン思考では、顧客が出した不満に対して推測しながら、もっと潜在的に悩んでいることを探ります。
今回は、
「我々はどうすれば、泊まってもらう人が、日常生活の心地よさを、旅館でも感じてもらえるだろうか?」
と定義付けして、話を進めていきました。
3. 発想(Ideate)
2.で定義づけた問題を解決する具体的な方法を探し出します。
チーム全員でアイディアを出し合って、最終的に絞り込んでいくのがこの過程です。
デザイン思考の「発想(Ideate)」の部分では、「拡散」と「収束」に分けられます。
問題解決のアイディアを出す「拡散」の段階ではアイディアを出すことに集中し、「収束」するときは出されたアイディアのなかで、判断基準に基づいてアイディアを絞ります。
ここで発想を出すのによく使われるのが、ブレインストーミングです。
アイディア出すときに大事なのは、アイディアを出しやすい環境を演出を作ることだと言えます。
たとえば、ジャッジしない、大胆なアイディアでもOK、否定しない、質より量を多く出す、などです。
ネガティブな発言や雰囲気を作ると。新しいアイディアが出にくくなっていきます。
とにかく否定せずに、ポジティブに、たくさんの量のアイディアを出すことが大事です。
アイディア出しが終わったら、「収束」のパートです。
みんなで投票などをして、解決策を絞り込んでいきましょう。
このときは、判断基準を決めて、それに沿っているかを判断します。
たとえば例に出すと、顧客が真に求めているか?(Desirability)、技術的・法律的に実行可能か?(Feasibility)、会社がやりたいことか、利益に繋がるか?(Visibility)などです。
他にも、事前準備で設定した目的・制約に沿っているか?自分たちの立てたHMWに沿っているか?顧客の本質的な欲求に沿っているか?を考慮します。
この時に新しいアイディアは出しません。
上の判断基準をもとに、最終的にいくつかに絞りましょう。
先ほど、「我々はどうすれば、泊まってもらう人が、日常生活の心地よさを、旅館でも感じてもらえるだろうか?」
と問題定義しました。
この場合、「拡散」のパートでは意見をたくさん出し合い、「収束」のパートでは現実的に実行可能なアイディアを絞っていきます。
「旅館のテレビのチャンネルが少なくて見られないなら、旅館でミニシアターを開いてみては?」
「旅館にいっそ洋室を作ってみてはどうだろう」
「旅館で浴衣だけではなく、レンタルの素材のいいパジャマを貸し出してみては?」
「旅館でもスマホや自宅で自分の視聴している動画の続きを見れるようにしてみては?」
このように現実的に実現可能なものから、ちょっと無理そうなものまでアイディアを出し、収束のパートで判断基準に沿って絞るのがコツです。
ここでは、「日常的に見ているテレビや動画が見たくなった時に、旅行中の旅館でも見られることで、日常生活の居心地の良さを感じてもらうこと」にしました。
4.試作(Prototype)
アイディアが出たら、実際に検証できる試作品・プロトタイプを作ります。
試作品やプロトタイプというと、何か形あるものを意識してしまうかもしれません。
ただここで大事なコツは、自分たちの出したアイディアが顧客に求められているかを確かめることです。
だから一言の質問の例でも、試作品やプロトタイプは成り立ちます。
たとえば、「日常見ているテレビや動画が見たくなった時に、旅館でも見られることで日常の心地良さを感じてもらう」というコンセプトであれば、最初の検証はこれだけでも大丈夫です。
「『寝る前にいつも見ているネットフリックスの動画の続きを見られる旅館』があれば、あなたは泊まってみたいですか?」
この質問を多くの人に聞いて回るだけでも、最初は大丈夫です。
これで泊まってみたいという声が多ければ、次の試作品やプロトタイプを作ればいいですし、「魅力的に思えない」と言われたら考え直す必要があるでしょう。
最初から旅館の一室を借りて、テレビにアマゾンファイアスティックやクロームキャストを設置して、ネットフリックスやアマゾンプライムビデオを使える環境を作って、実際に泊まってもらうのは時間がかかります。
試してもらう人数も限られてしまうので、最初からそこまでやる必要はありません。
最初の段階では、自分たちのアイディアが受け入れられるかどうかを確かめ、徐々に精度を高めるくらいで大丈夫です。
また試作品やプロトタイプを作る時に大事なのが、短期間かつ低予算、少人数で作ることです。
実際に作るなら、紙やペンを使って30〜40分くらいで作れるものが望ましいと言えます。
ソフトウェアであれば、デザイン用のアドビエックスディー(Adobe XD)やスケッチ(Sketch)。
プレゼンテーションソフトのキーノートやパワーポイントを使うのもありです。
5.テスト(Test)
最後の段階は、作ったプロトタイプを顧客テストを通じて評価します。
テストのパートでは、顧客になぜ響いたか、なぜ響かなかったのかを検証するのが重要です。
なぜを引き出そうとすると、デプスインタビューが必要になることが多いので、試してもらった後に深く掘り下げる必要があります。
たとえば、テストをしてみて、「寝る前にいつも見ているネットフリックスの動画の続きを見られる旅館」のアイディアが響かない顧客も多いでしょう。
この段階で立てた仮説と照らし合わせ、しっかり検証することが大事です。
「寝る前に旅館のテレビの大画面でネットフリックスを見れられたら、あなたは泊まりたいと思いますか?」
「いいえ、泊まってみたいとは思いません」
「どういったところに違和感を覚えましたか?」(なぜ?)
「そもそもネットフリックスのアプリを入れてません」
「日常的にどのようにテレビや動画を見てますか?」(どのように?)
「いつもはYouTubeをよく見ています」
「では寝る前にテレビの大画面でYouTubeが見られる旅館があります。これについてどう思いますか?」
「あー、それならいいかもしれません」
デプスインタビューなどを行う際は、「なぜ?どうですか?」と深掘りして、なぜ顧客に響かないかを確認しましょう。
質問はイエス、ノー形式で答えられることではなく、オープンエンド(自由文形式)で聞いて、顧客になぜそう思うかを考えて説明してもらいます。
これによって自分たちが想定していなかった気づき(インサイト)を得ることができるのです。
このインタビュー結果を検証し、デザイン思考の1〜5まであるどのステージに戻るかを決めましょう。
そもそも顧客にとって、「旅館でネットフリックスを見れる環境を作って、日常の居心地の良さを感じてもらうのが求められていない」という検証結果であれば、「2. 定義(Define)」まで戻って問題を再定義します。
問題としてはよかったが、旅館でテレビを見ることが日常の心地よさにつながらないであれば、「3. 発想(Ideate)」に戻って発想し直します。
なにを検証できて、何を検証し直さなければならないのか?インタビューの結果を元に考えましょう。
ここで重要なのは、短期間かつ低予算で、素早く検証することです。
デザイン思考で大事な考え方の一つに、「早く失敗する」が挙げられます。
早く失敗すれば、それだけ早くプロダクトの弱点や欠点を発見できたということです。
できるだけ早く失敗するには、テストまで素早くたどり着かないといけません。
テストを実行したら、テスト前に決めた判断基準に対し、顧客の評価でどうだったのか考える必要もあります。
それによって、どこに戻るのか(反復、iteration)を決めましょう。
さいごに
デザイン思考はまだ新しい考え方であり、一度では理解しにくいと言われています。
しかし、今までのやり方で行き詰まったり、顧客のニーズを汲み取るためにはとてもいい考え方です。
この記事がデザイン思考の理解が深まる手助けになると嬉しいです。
【関連記事】
今回の記事で載せられなかったデザイン思考の欠点とうまくいかない理由の記事はこちらです。