セルフブランディングはなぜ痛い?本来のパーソナルブランディングと比較してみた

これからの働き方

セルフブランディングとパーソナルブランディング。いったい何が違うかと悩んだことはありませんか?

個人をブランディングする「個人ブランディング」の概念は、インターネットとSNSが普及するにつれて世界中で広まっていきました。

しかし、日本で「セルフブランディング」や「パーソナルブランディング」と聞くと、どうしても怪しいと思ってしまう人が多いと感じます。

ネット検索の結果を見ても、「セルフブランディング 痛い」と検索する人もいるようです。

この記事では日本語のセルフブランディング・パーソナルブランディングはなぜ怪しいイメージがつきまとうのか?

一方で、アメリカのパーソナルブランディングはどんな使われ方をしているか。

この差について紹介してみました。

パーソナルブランディングは正しく使えば、自分の信頼性を上げ、キャリアアップや転職、知名度の向上など、自分の選択肢を広げてくれます。

ぜひ参考になれば嬉しいです。

パーソナルブランディングとは何か?

そもそもパーソナルブランディングとはなんでしょうか?

パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』の著者であるピーター・モントヤは以下の3つが大事だと語ります。

・あなたは誰なのか?
・あなたは何をしているのか?
・あなたが他人の違うところ、あるいはターゲットとするマーケットに対してどんな価値を提供するのか

これを自分で意識的にコントロールして、将来の見込み顧客に対し、自分の価値をマスメディアやネットを通じて伝えます。

パーソナルブランディングの概念的は1930年代からありました。

パーソナルブランディングは、トム・ピーターズが1997年に発表した “The Brand Called You “という論文の中で、”Age of the Individual “の中で自分自身をブランディングすることを提案したものだと考えられている。

しかし、実際には、1937年にナポレオン・ヒルが著した『Think and Grow Rich(思考は現実化する)』の第6章で紹介されています。

その後、1981年に出版されたアル・リースとジャック・トラウトの著書「The Battle for Your Mind」の第23章には、「ポジショニング戦略を使って自分のキャリアを向上させることで利益を得ることができる」と書かれています。

重要な原則。すべてを自分でやろうとしないこと。乗ってくれる馬を探せ」ということです。

引用:https://www.gauravgulati.com/history-personal-branding/

しかし、インターネットが普及する前(具体的に言うと1995年のWindows95の登場以前)にパーソナルブランディングできる人は限られていました。

なぜならテレビ、新聞、出版物などのマスメディアに出演したり、寄稿できる人しか使えなかったからです。

しかし、インターネットの登場とともにパーソナルブランディングは民主化されました。

インターネットの登場して以降、Google検索とSNSの普及により、誰もが個人のパーソナルブランドを調べることが容易になったからです。

たとえば自分の名前を検索で調べられた時、Linkedin、Facebook、Twitter、Instagram、これらのアカウントは上位5位に確実に出ます。

インターネットとSNSのおかげで、その人のどんな経歴、強み、趣味、考え方が誰でもわかる時代になったのです。

パーソナルブランディングは、意識的に自分が相手に与えるイメージをコントロールするところから生まれました。

インターネット上のパーソナルブランディングの考え方が2000年代に入り、日本にも入ってきたのです。

日本でのパーソナルブランディングとセルフブランディングの歴史

では日本語におけるパーソナルブランディングとセルフブランディングは、日本人の中にどう受け入れられたのでしょうか?

日本にパーソナルブランディングという単語が入ってきたのは、2000年代でした。日本で初めて『パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』というタイトルが冠された書籍が発売されたのは、2005年のことです。

その後にパーソナルブランディングの概念は、セルフブランディングという単語に置き換わり、2010年代に広まっていきました。

アマゾンジャパンで「パーソナルブランディング」「セルフブランディング」のタイトルが冠された書籍を探すと、2021年5月の時点で20冊あります。

一番古いのは、2005年6月にピーター・モントヤの『パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』です。

2010年に入り、佐々木俊尚さんの『ネットがあれば履歴書はいらない ウェブ時代のセルフブランディング術』が出版されました。

これがきっかけになり、日本ではパーソナルブランディングより、セルフブランディングという言葉が使われるようになります。

2011〜2012年に日本で出版された個人ブランディング関連の書籍は、セルフブランディングをタイトルに冠したもののみです。

ダン・ショーベルの『ME2.0 ネットであなたも仕事も変わる「自分ブランド術」』もパーソナルブランディングに関連する書籍でしたが、パーソナルブランディングの名はタイトルに含まれていません。

(ダン・ショーベルの書籍出版のきっかけになった個人ブログには、パーソナルブランディングの名前はついてます)

2005年のピーター・モントヤや2010年のダン・ショーベルはパーソナルブランディングという言葉で、日本に個人ブランディングを紹介しました。

しかし、佐々木俊尚氏の新書タイトルがきっかけになり、セルフブランディングという言葉と概念は日本語で広まったと言えるでしょう。


日本におけるセルフブランディングとパーソナルブランディングの区別

日本語において、セルフブランディングとパーソナルブランディングという言葉はどういう区別があるのか?

そんな疑問がある方もいるのではないでしょうか。しかし、厳密で明確な区別はありません。

最初にパーソナルブランディングという言葉と概念が入ってきましたが、セルフブランディングと訳された言葉を多くの日本人に受け入れたためです。

だが、10年以上の長い時間をかけて、2つの言葉は日本語の中でイメージがついてきました。

・セルフブランディングのほうがパーソナルブランディングよりも調べられてる

(Google検索の検索数を調べ)

・セルフブランディングのほうが怪しい単語だと認知されている

(Google検索のサジェスト調べ)

細かく見てみましょう。

セルフブランディングのほうがパーソナルブランディングよりも調べられてる

セルフ ブランディング 1000~1万
セルフ ブランディング 意味 100~1000
セルフ ブランディング 痛い 100~1000
セルフ ブランディング と は 100~1000
パーソナル ブランディング 100~1000
パーソナル ブランディング と は 10~100



こちらはGoogleのキーワードプランナーを使った検索ボリューム調べです。

Googleは日本の検索エンジンの約9割のシェアを占めています。

Googleの日本語検索で調べられる回数の単語は、日本語話者の言葉のイメージそのものだを反映していると言えるでしょう。

検索数を見てみると、セルフブランディングはパーソナルブランディングの10倍多いです。

個人ブランディングという概念を日本語で調べた時、セルフブランディングのほうがパーソナルブランディングよりも知られていると言えます。

セルフブランディングのほうが怪しい単語だと認知されている

一方で、セルフブランディングのほうが怪しいイメージがついているのも否めません。

Google検索にはサジェスチョン(提案)という機能があります。

一つの単語を打ち込むと、自動的に検索数の多い2つ目の単語を提案してくれる機能です。

この時に「セルフブランディング」と打ち込むと、「痛い」や「うざい」という単語がサジェスチョンされます。

セルフブランディングは単語にマイナスのイメージがついてると言えるでしょう。


日本におけるセルフブランディングはなぜ怪しいイメージを持たれてるのか?

「セルフブランディング 痛い」など、怪しいイメージを持たれるセルフブランディングという言葉。

本来は個人をブランディングして、組織の後ろ盾がなくても、自分の強みをアピールできる素晴らしい手段になるはずでした。

なぜ「痛い」や「うざい」などのマイナスイメージが持たれたのでしょうか?

理由はいくつもあるでしょう。

個人的な見解ですが、多くの発信者側が個人ブランディングを誤解し、有名になるための手段と捉え、自分を大きく見せたり、マス向けの中身の薄い発信をしてしまったのが原因ではないかと考えています。

私は2010年からTwitterを始め、台湾旅行の情報を発信し、フォロワー数が7,500人以上います。

自らこの10年間でSNSを使った個人ブランディングをしてきましたが、多くの人や自分が陥った失敗と罠を描いてみました。

・情報発信の手段として、SNSをメインに使うため、フォロワー数が可視化されている

・数字がわかりやすい序列を作るため、フォロワー数の多いアカウントの発言が説得力・影響力・正当性があると考えられてしまう

・パーソナルブランディングの成功=フォロワー数(Twitterだと1万人以上)だと考えられる

(LINEのインフルエンサー検索の定義もフォロワー数1万人以上から)

・多くのフォロワーを獲得しようと、マスに響く情報を発信する人が多い

(専門的な発言はいいね!やフォロワーがつきにくいため)

本来のパーソナルブランディングは、自分の届けるべきターゲットを想定し、求められている情報をブレずに発信するのが大事です。

しかし、フォロワー数の獲得に躍起になると、いいね!がつきやすい投稿をしがちになってしまいます。

たとえば台湾旅行の情報を扱ってるなら、いいね!が少なくても、日本人の知らない台湾の良い観光地を紹介することが大事です。

だが、フォロワー数獲得ばかり考えると、台湾では2万円で5つ星ホテルに泊まれるなど、キラキラした紹介をし出してしまいます。

他のアカウントでも、必要な人に必要な情報を届けるのではなく、1万人以上のフォロワーを獲得するのが目的になると、やり方が変わってきます。

「お金」や「稼ぎ方」、「独立方法」など、大勢の人が興味を持つ話題をツイートしたほうがフォロワー数を集めやすくなり、煽るようなツイートが増えます。

それを「セルフブランディング」という言葉を使って、自分たちのやってることを肯定化しているように思います。

さらに有名インフルエンサーになりたい人は、自分を大きく見せる意識高いツイートをしたり、有名人との繋がりをSNSに乗せる人もいます。

このような振る舞いのアカウントが増えると、個人ブランディングに対して怪しいや痛いイメージを持つ人が増えます。

本当は自分の強みの情報を伝えるべき人のために発信する。これが本来のパーソナルブランディングです。

パーソナルブランディング』の著者ピーター・モントヤも、パーソナルブランディングにできないことを挙げています。

・能力不足を補う

・有名にすること。

パーソナルブランディングは自分の強みを伝えるものであり、勉強不足の能力をカバーしてくれるものではありません。

逆にSNSやネットで多くの人に届くことで、自分の能力不足がバレてしまいます。

また有名になることも本来の目的ではありません。正しいターゲットに伝えることがゴールです。

伝え方を間違ってしまうと、セルフブランディングやパーソナルブランディングは失敗します。

その結果、「セルフブランディングは痛い」というイメージを持つ人が多くなったのではないでしょうか。


本来のパーソナルブランディングとは

本来のパーソナルブランディングとは、どんなものでしょうか。

パーソナルブランディングの本来の意味は、自分のプロフェッション(専門分野)を相手に認知してもらい、キャリアアップにつなげる方法です。

例えばSNSマーケティング担当者が、自分の新たな強みを「アプリデザイン」にしたいと考え、新しく毎週スマホアプリを100個ダウンロードして、勉強し始めたとしましょう。

表面的にパーソナルブランディングをしている場合は、「アプリのデザインに強い」というのをSNSで発信して、会社外(所属してる組織外)の世界に伝えることをパーソナルブランディングと捉えられがちです。

しかし本質的には、自分の会社の上司や同僚に対してアピールすることも、パーソナルブランディングの一つなのです。

日常業務をこなしながら、「自分はアプリのUXデザインにも強い」と自分の学んだ新たな強みをアピールすることも、パーソナルブランディングの一つに入ります。

本来のパーソナルブランディングでは、さりげない行動も立派なパーソナルブランディングになるのも見逃せません。

フォーブス誌で「職場でのパーソナルブランディングに必要な5つのこと」を掲載しているジョセフ・リューが自分の経験をもとに、こんなステップを紹介しています。

・自分のパーソナルブランディングの看板にしたい社内の仕事に手を挙げる

・自分のパーソナルブランディングの看板にしたい関連分野の会議で質問する

まわりの人に「あの人はこの仕事に積極的だ」と印象付けるのも、パーソナルブランディングのベイビーステップです。

一方、プライベートの時間にSNSやブログなどで情報を発信したり、セミナーなどに参加して交流を深めるのも、パーソナルブランディングです。

キャリアアップにつなげたい自分の専門分野を、どう社内外で認知を高めていくか。

これが本来の意味でのパーソナルブランディングなので、興味ある方は関連記事を読んでみてください。

こちらのリンク先の記事にもっと詳しいやり方を紹介しています。

リンク:パーソナルブランディングとは?キャリアアップにつなげる方法を解説

最後に

最後にまとめます。

日本語のセルフブランディングとパーソナルブランディングという言葉は、最初にパーソナルブランディングの概念と言葉が入ってきました。

しかし、その後に佐々木俊尚氏がセルフブランディングの言葉を書籍のタイトルに使ったことで、セルフブランディングの言葉が広まり、現在に至ります。

また2010年代に有名になりたい、実力以上の自分をSNSで表現する人が出てきて、その人たちがセルフブランディングの単語を使ってしまいました。

その結果、「セルフブランディング 痛い」というマイナスイメージがついてます。

一方で、本来の意味でのパーソナルブランディングの定義ははっきりしていました。

所属してる組織の内外の両方に向けて、自分の強みを掲げて他者に認知してもらい、キャリアアップにつなげていく考えだと言えます。

ベイビーステップで誰にでも試せる概念なので、興味がある人はぜひ試してほしいです。

アルトプロでは他のパーソナルブランディングの記事もあるので、よかったら読んでみてください。