みなさんは、「英語での会議となると、どうも発言しにくい…」や「自分の英語力ではうまく伝わらないかも…」と感じられたことはありませんか?
英語があまり得意ではない方だけでなく、英語力はあるにもかかわらず、そう感じている方もいるようです。
今回は、グローバル企業でコミュニケーションコンサルタントとして長年活躍されてきたFocus Cubedのウォーレンさん(Warren Arbuckle)へのインタビューから、そんな悩みを解決するための実践的なヒントをお届けします。
この記事は、インタビュー動画(全2回)をもとに記事にしております。
元動画である「英語での会議についていけない!?カナダ人コンサルタントから見た課題とは【インタビュー第1回】」と「すぐに使える!英語の会議で使えるテクニックとは!?カナダ人コンサルタント直伝【インタビュー第2回】」では、より具体的な事例をつかって説明されていますので、よろしければこちらも観てください。
なぜ英語の会議で発言できないのか?
「英語の会議で発言できない」
「発言しようと思ったけど、発言しようと思った時に、次の議題に進んでいた」
英語の会議において、発言を躊躇したという悩みを聞くことが多くあります。
「もう少し英語ができたら」や「英語力がないから」と考えるかもしれません。
確かに、英語が流暢であればそれに越したことはありませんが、英語力はそこまで高くなくてもいいのかもしれません。
ウォーレンさんによると、TOEIC400~500点レベルの英語力でも、コミュニケーション・スキルがあれば十分にビジネスで通用するとのことです。
世界で見ると英語のネイティブスピーカーは少数派で、ノン・ネイティブスピーカーの方がはるかに多いのです。
相手はあなたの完璧な英語よりも、あなたの意見や質問を知りたいと思っています。
では、なぜ発言が少ないと問題なのでしょうか?
情報交換の機会損失とコスト増大
「会議中に質問してしまうと、会議の流れを遮ってしまうから」
会議中に質問せず、後からメールや個人的に質問してしまう方も多いかと思います。
しかし、これでは他の参加者も知りたかったかもしれない情報が共有されず、チーム全体での情報交換が滞ります。
結果的にチーム全体でのコミュニケーション・コストが増大します。
また、欧米の視点からすると、「なぜ会議中に質問しないのか」と疑問に思われることが多いようです。
チームへの悪影響とビジネスの停滞
会議中に発言しないと、海外のメンバーからは「なぜこの会議にいるのか?」「チームプレイヤーではない」と見なされてしまう可能性があります。
ウォーレンさんの経験によれば、意見を聞きたいから参加してもらっているのに発言がないと、極端な例では「この人は会議に入ってもらう必要がないのでは?」という議論に発展することもあるそうです。
また、意見や質問ができないことで、ビジネスの進捗が遅れることが想定されます。
顧客が関わってくると、顧客サポートが滞り、顧客満足度が低下するなどの具体的な悪影響が生じることもあります。
半導体企業の事例では、日本のマネージャーが技術エキスパートであるにもかかわらず、海外への問題説明やサポート要請ができないために、顧客のビジネスにまで影響が出てしまうと指摘されています。
沈黙は「無関心」や「同意」と誤解されるリスク
「どう返答していいかわからない」と黙っていても、海外の会議相手は全く違う受け止めをしているかもしれません。
会議中に質問がない場合、相手は「100%理解している」か「全く興味がない」かのどちらかだと受け取ります。
欧米人など海外との会議では、反対意見を表明しない場合は、同意していると判断されてしまいます。
日本人が「言わなくても分かるだろう」と考えるような文化的背景は、海外の会議では通用しません。
欧米では、長期的な沈黙はネガティブに捉えられるのです。
実際に、日本の戦略を海外に適用する際に、日本人メンバーが意見を出さなかったために、ローカライゼーションがうまくいかず、後で困るというケースもウォーレンさんは見てきたそうです。
興味深いことに、英語での会議において、日本人に対するアンケートでは62%が英語会議にナーバスに感じていると回答したにもかかわらず、外国人の回答者でそのナーバスさに気づいている人は20%以下しかいないとのことです。
さらに、日本などの間接的なコミュニケーション文化圏の従業員の最大64%がグローバルビジネス環境で不満を感じていると報告しているにもかかわらず、直接的なコミュニケーション文化圏の従業員のわずか9%しかその不満に気づいていないという調査結果もあります。
あなたの「ポーカーフェイス」は、相手には伝わっていないどころか、別の意図として解釈されている可能性があるのです。
英語力よりも大事!今日からできる5つのコミュニケーション・テクニック
英語のスキルアップには時間がかかりますが、コミュニケーション・テクニックは練習次第で、より早く身につけることができます。
ウォーレンさんは、特に会議において日本人におすすめしたい5つの基本的なスキルがあると語っています。
Workshopで実際にウォーレンさんが教えている内容を説明してくださいました。
今の英語力でも即座に効果を発揮する実用的なテクニックですので、ぜひ試してみてください。
1.躊躇しない返答(Speak Up with No Hesitation)
質問されたら、すぐに返答する練習をしましょう。
たとえ完璧な英語でなくても、間髪入れずに返答する姿勢が重要です。
これは、予期せぬトピックにも自信を持ってコメントするための第一歩です。
2.会話に「飛び込む」(Jump In)
日本文化では「割り込み」はあまり良い印象を与えませんが、欧米の会議では自然な行為です。
発言したいタイミングを逃さず、積極的に会話に参加しましょう。
簡単なフレーズから始めることで、議論に参加し、主導する方法を学びます。
3.スムーズな反対意見の表明(Disagree Smoothly)
英語はストレートに伝えた方がよいからと言って「No, I don’t agree」とストレートに言うのは、時に攻撃的に聞こえてしまいます。また、日本人にとっては言いづらい場合があります。
そこでウォーレンさんが推奨するのは、質問に変換して伝える方法です。
例えば、ある提案が「リスキーだ」と感じた場合、直接「No, it’s too risky」と言うのではなく、「Could you explain more about the risks of this project?」(このプロジェクトのリスクについてもう少し教えていただけますか?)と質問するのです。
これにより、相手はリスクについて説明し、あなたは追加情報を得ることができます。
また、相手が説明する側に回るため、自分が「なぜそう思うのか」を詳しく説明する必要がなくなり、議論の主導権を握ることも可能です。
これは、緊張を引き起こしたり、調和を乱したりすることなく、スムーズに英語で反対意見を表明するための方法です。
4. 会話を「コントロールする」(Control the Conversation)
もし話が長すぎたり、複雑で理解できない場合は、放置せずに、その場で会話をコントロールしましょう。
理解できないならその場で質問するのが当たり前であり、質問しないと「聞いているのか?」「理解しているのか?」と判断されてしまいます。
「Could you elaborate on that point?」(その点についてもう少し詳しく説明していただけますか?)、あるいは「I’m not sure I follow, could you rephrase that?」(よく理解できませんでした、言い換えていただけますか?)といったシンプルなフレーズでも十分です。
「That’s interesting.」のような簡単な相槌でも、関係値やリレーションシップ(人間関係)を築く上で非常に重要です。
何も言わないと関係性は築けず、いざサポートが必要な時に頼みづらくなってしまいます。
コミュニケーションは単なる情報交換だけでなく、関係構築も目的とするからです。
5.ビジュアルエイドの活用(Visual Aids)
英語の発音に自信がない、あるいは伝えたいポイントがなかなか伝わらないと感じる場合は、視覚的な補助を積極的に活用しましょう。
例えば、PowerPointのスライドに伝えたい要点を明確に書いておく、グラフや図で視覚的に表現するなどです。
言葉での説明が難しくても、視覚情報として相手の目から入ることで、あなたの意図が伝わりやすくなります。
一流のプレゼンターも、言葉は少なく、ビジュアルを多用しているものです。
文化の違いを理解し、コミュニケーション・スタイルを合わせる
英語での会議は、単に「英語を話す」だけでなく、「英語(あるいは欧米)のコミュニケーション・スタイル」に合わせることが重要です。
ウォーレンさん自身も、カナダ式の直接的なコミュニケーション・スタイルで日本語の会議に参加した際、「アグレッシブすぎる」と受け取られ、文化的な違いを痛感したことがあるそうです。
欧米のコミュニケーションは、フランス人やドイツ人なども含め、一般的に日本人よりもストレートです。
しかし、ストレートすぎても伝わらない場合もあるため、バランスが重要です。
海外のメンバーとの会議に参加する際は、沈黙がネガティブに取られることを理解し、積極的に発言することで、誤解を防ぎ、より円滑なコミュニケーションを築くことができます。
Speak Up with Confidence:コミュニケーションの課題に特化したプログラム
ウォーレンさんの提供する「Speak Up with Confidence」プログラムは、従来の語学学習とは異なり、英語レベルではなく「ためらい」に焦点を当てています。
完璧な文法や語彙を習得するのではなく、すでに持っている英語力で効果的にコミュニケーションを取る方法を学ぶことに主眼を置いています。
このプログラムは、参加者を「傍観者から影響力のある人物」へと変革することを目指し、自信を持って質問に答えたり、瞬時に信頼関係を構築したりするのに役立つシンプルなフレーズを提供します。
その結果、参加者は「過去には全く意見を表現しようとしなかったが、これからはできるかもしれないと感じる」、「英語の会議が怖くなくなり、もしミスをしても気にしなくなった」といった変化を実感しています。
また、学んだテクニックは、プロジェクトのリソース確保、チームのニーズの考慮、顧客の懸念の代弁、グローバルな関係構築など、実際のビジネス成果に直結するよう設計されています。
まとめ:今日から一歩踏み出そう
英語の会議で発言することへのハードルは、決してあなたの英語力だけが原因ではありません。
多くの場合、コミュニケーションの「やり方」を知らないだけなのです。
そして、これらのコミュニケーション・テクニックは、言語学習よりもはるかに早く身につけることが可能です。
今日からご紹介したテクニックを意識して、実践してみてください。
一つ一つの小さな「発言」が、あなたのビジネスを前進させ、グローバルな舞台での活躍の扉を開くことでしょう。
ウォーレンさんは「Speak Up with Confidence」というプログラムで、これらのコミュニケーションテクニックを企業向けにトレーニングやワークショップで提供しています。
興味がある方は、ぜひ「Speak Up with Confidence」のウェブサイトで詳細を調べてみてください。
また、インタビューの元動画では、さらに詳しい事例や実体験をもとにお話を伺っています。ぜひこちらの動画もAltProのYouTubeからご覧ください。